4-31.昭和8年・萬国婦人子供博覧会 5 絵葉書   ・ 


こちらはこの博覧会の時に販売されていた記念の絵葉書です。
この博覧会は《明るい日本、榮える日本》をキャッチフレーズに開催されましたが、桜が咲く上野の博覧会場にほっぺの赤い子供たちのイラストがなんともいえない味を出しています。

16枚入ったものが1セットと、同時開催のサーカスの絵葉書が残っていました。


前々頁の不忍池と違う角度から見た池之端の博覧会会場ですが、博覧会場の丸い屋根や《三菱マーク》
そして《明治チョコレート》や《わかもと》などという看板も見えます。


この【わかもと】とは昭和4年に【栄養と育児の会(現わかもと製薬)】から発売された家庭薬の【わかもと】のようです。
この当時は育児薬として販売しており、丁度昭和8年頃から新聞1頁広告なども多くなり、家庭薬として人気となった頃です。
こうした事もあってこの婦人子供博覧会に協賛していたのでしょう。

手前にはボートが見えますが、【昭和8年・上野不忍池】で写る建物は、この博覧会の会場のことです。
また写真もこの近辺から撮影したもののようです。


上は【JOAKラヂオ館】という文化通信館です。
JOAKとは現在の【NHKラジオ第一局】のコールサインですが、この当時は【東京中央放送局】と言い、大正14年に開局しています。
ラジオ放送が始まり、あっという間に国民に広まったラジオ放送は、博覧会のスポンサーでもあったようで、一般入場券よりも3割引の割引券も発行していたようです。

これ以外には、池之端会場には、《逓信文化館》、《大阪商船館》、《東郷館》、《家庭用品展示館》そしてアメリカから船で運ばれてきた1万6千貫の《大鯨館》があったようです。
また竹ノ台会場(上野公園)には《外国館》、《台湾館》、《満州館》、《教育館》、《浅草観音宝物殿》などがあったようです。



こちらは博覧会の芝橋会場正面入り口ですがが、空には飛行機が飛んでいます。
《WOMAN AND CHILDLEN INTERNATIONAL EXHIBITION》
という英語の表記も見えます。


左手にはグリコの看板も見えますが、妙におじさんの感じです。
また下には《上野・芝浦リレー大福引》の看板も見えますが、グリコがスポンサーで芝浦と上野の両会場で福引を実施していたのかもしれませんね。
こうした博覧会は新しい製品や企業の最高のPRの場でもあったようです。

美樋川には窓口と、開場午前9時・閉場午後5時の文字も見えます。
入り口右手に見える建物が、博覧会の最初のページにあった《子供自動車館》のようで、先の写真にも同じような柱が見えます。


こちらは芝浦会場内の【水族館】で、正面入り口には人魚の姿が描かれ、《aquarium》と英語表記もされています。
入り口は洞窟のような雰囲気ですが、横の看板には
《魚群大行進 大魚・奇魚・珍魚 百余種類》
等と書かれています。
人魚といい洞窟といい、確かに見てみたい気もします・・・。


が、よく見ると人魚が太めな勘治もします。
また建物右にあるのは《高速度自動写真撮影・三十銭》こと現在のスピード写真でしょうか?
この時代にあったとは驚きです。
手前には《グライダー》の字が見えますね。
これ以外には、芝橋会場には《ローラースケート》や《モーターボート》、《テレビジョン館》などがあったようです。


そして上が、芝の会場で開催されたサーカスのテント小屋の絵葉書です。

《独逸ハーゲンベック》と《猛獣大サーカス》の文字が見えますが、確かにトラやライオン、熊などが多数登場する大規模なサーカスだったようです。

記録によると、この時連れてきたの
は、虎19頭、ライオン11頭、熊13頭、象5頭、オットセイ6頭、馬33頭、子馬13頭、ラクダ6頭、シマウマ4頭、キリン2頭、サイ1頭などで、その食費だけでも1日\350もかかったそうです。

《開国以来の大騒ぎ》となった、このハーゲンベックのサーカス興行を境に、今までの曲馬団や曲芸団は、その名前や内容を変えるようになります。
因みにこの時に来日したサーカス団の団長ローレンツ・ハーゲンベック氏は、動物園経営者でもあります。
そして兄のカール・ハーゲンベック氏は、無柵放養式を採用したドイツのハーゲンベック動物園を開園し、動物園王とも言われています。
無柵放養式とは、極力檻がなく、自然の環境のまま動物を公開する方式で、昭和12年の名古屋東山動物園はいち早くその方式を取り入れています。

最近でも国内の動物園は、自然のままの動物の姿を見せようと工夫をしていますが、はるか昔からそうした自然の姿を見せる動物園があったのですね。
それにしても、当時のサーカスの動物は、よく調教されていたようです。





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