4-32.昭和8年・外房 かつうら駅 ← ・ → |
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夏の海水浴は伯父たち兄弟にとっては毎年最大のイベントのようなものだったそうです。 というのも、毎年毎年家族で関東近郊の各地の海へ海水浴に行っていたそうで、それも現地に何泊かして過ごすのが、恒例となっていたとの事です。 今のようにマイカー等で簡単に旅行が出来るような時代ではなかったことから、伯父たち兄弟の楽しみといったらたいへんなものだったでしょう。 さて、ここから続く写真は、昭和8年8月に、千葉県外房の御宿や勝浦等で、家族や上野桜木のお友達と一緒に1ヶ月近くを過ごした時の様子です。 1ヶ月も千葉の海で過ごすとは、今では考えられませんが、この時は上野桜木の自宅の改装も兼ねての旅行だったそうで、当時母屋と離れていたお風呂場を屋内に設けたり、一部を増築したりとかなり大掛かりな大改装だったことからの長期滞在となったそうです。
外房最初の写真は、まず【勝浦駅のホーム】での写真です。 今や勝浦までは外房線の特急で東京駅から90分で到着ですが、 「昔は上野から汽車を乗り継いで、三時間以上かかったな〜。結構長かったけど、楽しみが待っていたし、皆で騒ぎながら、あっという間に着いたよ・・・」 と伯父は申していましたが、10人以上の旅行で、かなり賑わいながらの旅だったようです。 因みに、この頃両国から勝浦までは、3時間程で、運賃は1円50銭程の時代です。 ホーム案内板には《かつうら》や《おんじゅく》《うばら》の文字も見えますが、当然なが右から読む古い書き方です。 列車を見まししても、後ろの黒っぽい車両が古さを物語っていますが、《チバ12562》という文字もみえます。 その前に立つ伯父達の格好をみますと、みんな下駄履きの軽装ですし、手には小さな袋を持って既に色も黒いようです。 実はこの時は御宿に宿があり、御宿駅を拠点として毎日のように外房のいろんな海水浴場に出かけていたそうです。 「毎日同じ海じゃ面白くないので、外房のいろんな海に行った覚えがあるな〜。その時に撮った写真だろう・・・」 」それにしてもとにかく面白い夏休みだったよ!」 との事でしたが、外房の海水浴場を転々とするなど、今考えても豪勢な夏休みですね。 この外房線の勝浦駅が出来たのは大正2年の事で、現在の駅の姿になったのは昭和57年です。 下は現在の勝浦駅のホームとその案内板です。 70年以上を経て案内板の表示こそ左からに変わっていますが、後ろの山等は当時と同じ姿です。
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同じく勝浦駅ホームの写真ですが、この写真を現在の勝浦駅の駅員さんに見てもらい、場所を確認しましたら、 「この切通しは今もあるから鵜原方面へ向かって撮ったようですね・・・」と説明してくれました。 下の写真が現在の様子ですが、今も70年前と同じような景観です。
この外房線の歴史は古く、明治29年には大網までが開通します。 同じ千葉県の内房線が木更津まで開通したのが明治45年と外房線よりも随分後になりますが、これは内房は船の便が良い事から先に外房が開通したと思われます。 その後大正2年に勝浦まで延伸した以降、昭和4年には鴨川まで開通します。 ですので、写真の昭和8年の夏休みは、開通したばかりの外房線をフルに活用して、いろんな海に行っていたのでしょう。 |
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さて勝浦といえば、石川県輪島や岐阜県高山と並び日本三大朝市のひとつである【勝浦朝市】が広く知られています。 漁港近くの狭い路地の両端に80軒程のお店がずらりと並びますが、魚介類はもちろん、野菜や果物、乾物やお菓子、雑貨とさまざまなものが売られています。 何とその歴史は今年で417年で、天正19年(1591)に勝浦城主が、農業漁業の奨励の為、農具や漁具、産物の交換の場として始められたのが、最初と言われています。 因みに天正年間とは江戸時代前の時代で、豊臣秀吉が天下平定をした頃の時代です。 その後ますます市は発展し、明治時代から昭和中頃までは、ほぼ毎日市が開いていたそうです。 現在は毎週水曜日がお休みですが、朝6時頃から11時頃まで市が開いていますが、毎月1日〜15日が遠見岬神社に近い下本町で市が立ち、16日〜月末は漁港に近い仲本町で開かれます。 個人的にも勝浦には何度となく訪れていますが、朝市は大好きな場所のひとつです。 そして私たちが勝浦で毎回訪ねるのは、まず右の屋台の【きんつばや】さんです。 朝市できんつばを売り始めて50年という古株で、お店の屋台もその当時のものだそうです。 肝心の《きんつば》は、何と1個40円という驚きのお値段で、時には行列が出来る事もある人気店です。 中には真っ先にここで予約をし、市場をぶらりと回って帰りがけにまた立ち寄る方々もいらっしゃるようですが、きんつばを食べながら朝市を回るのも楽しみの一つかもしれません。 |
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また勝浦といえばお魚です。 朝市の近くには勝浦漁港がありますが、この勝浦漁港は千葉県で2番目の漁獲高を誇り、更に一本釣りの鰹(カツオ)の水揚げ高では日本一になった事もある日本有数の漁港です。 6月にはカツオの漁港らしく、【勝浦港カツオまつり】も開催され、こいのぼりならぬ《カツオのぼり》も見られます。 左は5月に訪れた時の勝浦漁港ですが、丁度カツオの水揚げの最中でした。 船からはベルトコンベアに乗せられたカツオが、女性たちの手でせっせと仕分けされ、そのままフォークリフトで漁港に運ばれ、早速威勢の良いセリが始まっていました。 そしてセリ落とされたカツオは、直ぐに市場や魚屋さんに向かい、右のように朝市でも売られますので、まさに魚場から家庭の食卓への最短ルートですね! もちろんカツオ以外にも新鮮な魚が獲れることから、市場にはさまざまな魚介類が並びます。 |
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そうした事から、時期があえば丸々としたカツオや生きたアオリイカ等新鮮な魚をを市場内で手にすることも出来ますが、何時も売っているのが干物です。 右の【しぎ商店】さんは、何と明治中頃から朝市で商売をしているとの事ですので、なんと干物を作って100年です。 更に売り子のおばあちゃんは、朝市で一番の高齢だそうです! おばあちゃんは高齢でも、朝市で売られている干物は、新鮮です! それもそのはずで、水揚げされたお魚は、この近くで下処理して天日干しをしているので、青物らしく青白く光っています。 |
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この朝市会場の近くには【遠見岬神社】があります。 60段の石段を登り、更に坂を上ると社殿となりますが、勝浦を一望できるとても眺めのよい所です。 この【遠見岬神社】が華やかになるのは、毎年2月末から3月初旬にかけて開催される【かつうらビッグひなまつり】の時です。 この60段の石段に1200体ものお雛様がずらりと並び、優雅でダイナミックな姿を見せてくれます。 更にこの期間の朝市の店頭も、各お店ごとお雛様が飾られ、個性豊かなお雛様は、見て歩くだけでも楽しくなります。 その他にも【ビッグひなまつり】というだけあって、江戸時代に作られた日本一大きいお雛さまも展示されます。 因みに【遠見岬神社】の石段のお雛様は、期間中雨天以外は飾られていますが、毎日朝早くに飾られ、夜になると撤収されるという、地元の方々のご苦労によって成り立っています。 尚、平成20年の【かつうらビッグひなまつり】の様子は、お星さまのブログにも掲載しております。 |
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最期の写真は、【塩辛】に【あまから】と両極端ですが、【塩辛屋】さんは、文字通り塩辛専門店で、勝浦で塩辛を作って55年という古くからのお店です。 もちろんご飯にぴったりの塩辛ですが、ここの岩海苔も美味しく、実はこの岩海苔はトーストにもぴったりという不思議な出会いです。 また【あまからや】さんは、甘味処と思えますが、実は中華料理店です。 朝市の通りから近く、ちょっと見ただけでは、入りにくそうな佇まいのお店ですが、オコゲ料理や麺類など、どれを食べても美味しく、毎回必ず食べに訪ねる楽しみな場所です。 |
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